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月別アーカイブ: 2025年11月

第23回牧場雑学講座

皆さんこんにちは!
株式会社前川農場、更新担当の中西です。

 

冬前の栄養戦略

 

11月は、肥育牛にとって「肉の質」を決定づける重要な時期です。
寒さが増すと、代謝が上がり、脂肪の蓄積バランスが変化します。
ここでは、冬を前にした栄養管理・飼料調整・肉質形成の考え方を詳しく解説します。


1. 牛の体は“冬モード”へ

気温が下がると、牛は体温維持のために体内エネルギーを多く消費します。
そのため、夏と同じ飼料量では体重が増えにくくなります。
11月以降は、飼料のエネルギー密度を上げることが基本戦略です。

例として、とうもろこしやふすまなどの炭水化物飼料を1〜2%増量し、油脂源(大豆粕・米ぬか油など)を適量追加します。


2. 脂肪交雑(サシ)形成とビタミンAの関係

肉質を左右する“サシ(脂肪交雑)”は、この時期の栄養管理で大きく変わります。
特にビタミンAはサシ形成に関与しすぎると霜降りが減るため、給与量をコントロールするのがポイントです。

ただし、完全に切ると免疫が落ちるため、「少なすぎず多すぎず」のバランスが重要。
血中濃度をモニタリングしながら、ビタミンA濃度を一定に保ちます。


3. 飼料嗜好性の向上

気温低下により飼料摂取量が減る個体も出ます。
この時期は「食いつき」を上げる工夫が有効です。

  • 発酵TMR(混合飼料)の導入

  • 温飼料(ぬるま湯でふやかす)で嗜好性アップ

  • トッピングに糖蜜を少量加える

こうした小さな工夫が、1日の摂取エネルギーを底上げします。


4. 飲水と反芻を観察する

寒くなると飲水が減り、反芻が少なくなることがあります。
反芻が減る=第一胃の動きが鈍るサイン。
飲水槽の凍結防止や温度調整で“飲みたくなる水”を維持することが、健康と肉質両方に直結します。


5. まとめ

11月は「食べさせて太らせる」ではなく、「吸収させて仕上げる」月。
エネルギー密度・ビタミンバランス・反芻リズムの3点を意識することで、脂のキメと旨味が大きく変わります。
冬に向けて、牛も経営者も体調と戦略の切り替えを行う時期なのです。

 


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第22回牧場雑学講座

皆さんこんにちは!
株式会社前川農場、更新担当の中西です。

 

“空気管理”

 

11月中旬。外気温が一桁台に下がる日も多く、朝露が凍るようになってきます。
この時期に牧場で重要になるのが、「牛舎の空気管理」です。

目に見えない“空気の質”が、牛たちの健康、そして肉質や成長にまで影響を与えます。


🌫️1. 冬前の空気環境と健康リスク

寒いからといって牛舎を密閉してしまうと、内部の湿度とアンモニア濃度が上がり、肺炎・下痢などの呼吸器障害を招きます。
逆に開けすぎると、冷気と乾燥で体温を奪われてしまう。

つまり、**「風通しと保温のバランス」**が生命線です。

特に11月は日中と夜間の温度差が大きく、深夜から明け方の冷気が最も危険。
風向き・湿度・牛舎内温度を毎朝チェックし、「温度差5℃以内」に保つのが理想です。


🧹2. 換気・清掃の習慣

牛舎管理の基本は「清掃と換気」。
糞尿が残ると、アンモニアガスと細菌が繁殖し、牛の呼吸器にダメージを与えます。

  • 毎朝の糞掃除と床の乾燥

  • ストール間の通気確保

  • ファン・換気扇のフィルター清掃

  • 床の水洗いは夕方に行い、夜までに乾燥させる

また、敷料は1週間に1回は全面交換を目安にします。
特に11月は湿気がこもりやすいので、オガ粉や稲わらを厚めに敷き、吸湿・断熱効果を高めましょう。


🧪3. アンモニア濃度と健康影響

牛舎内アンモニア濃度は、10ppmを超えると呼吸器への影響が出始めるといわれています。
目安としては、「牛舎に入って鼻がツンとしたら、換気が不足」。

このレベルでは、人にも牛にも有害です。
日中、扉や窓を一時的に全開にして空気を入れ替える“リセット換気”を取り入れるのも効果的です。


🌡️4. 乾燥対策と飲水管理

冬型気圧配置が始まる11月は、乾燥による鼻粘膜の損傷・咳が増えます。
加湿器や散水ミストを使用して、湿度50〜60%を維持。

また、乾燥により飲水量が減ると、尿が濃くなり腎臓負担や代謝不良を引き起こします。
水は1頭あたり1日40〜70リットルが目安。
水槽の凍結チェックを忘れずに。


🧭5. まとめ

11月の冷たく乾いた空気は、管理次第で「敵にも味方にもなる」。
清潔で適湿な空気を維持できれば、牛は食欲が増し、毛づやも良くなり、肉質の締まりも向上します。
見えない空気を整えることこそ、冬を前にした牧場経営の核心です。

 

 


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